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制度・法律
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カスハラ防止が事業主の義務に。ホテルで働く人が知っておきたいこと

2026年10月1日から、事業主にカスタマーハラスメント対策が義務づけられました。何がカスハラにあたるのか、ホテルが何をすべきか、起きたときにどうするか。

2026年10月1日、労働施策総合推進法の改正により、事業主は、顧客等からの著しい迷惑行為(カスタマーハラスメント、いわゆるカスハラ)を防ぐための措置を取ることが、法律上の義務になりました。ホテルのように、一日中お客様と接する職場にとって、今年最も関係の深い職場のルールの一つです。

この記事では、ルールの内容、何がカスハラにあたるのか、ホテルが何を整える必要があるのか、そして、自分に起きたときにどうすればよいのかを説明します。厚生労働省が公表している案内にもとづく一般的な情報であり、個別の事案についての法的助言ではありません。

なぜホテルで大事なのか

厚生労働省の最新の職場のハラスメントに関する実態調査(令和5年度、2024年3月公表)では、過去3年間に勤務先でどんな経験をしたかを、労働者に尋ねています。全産業では、顧客等からの著しい迷惑行為を一度以上経験した人は10.8%でした。「宿泊業、飲食サービス業」では16.0%で、調査に挙がっている業種の中で3番目に高い数字です。1位は「生活関連サービス業、娯楽業」(16.6%)、2位は「卸売業、小売業」(16.0%)でした。

調査は企業にも尋ねています。「宿泊業、飲食サービス業」では、過去3年間にカスハラについて相談があった企業が46.4%でした。これより高かったのは、「医療、福祉」(53.9%)だけです。カスハラに該当すると判断した事案があった企業では、最も多かった内容は「継続的な、執拗な言動」(72.1%)で、事案の9割以上(91.6%)は、顧客等(患者やその家族を含む)から自社の従業員に向けられたものでした。最も多かった損害は、通常業務の遂行への悪影響(63.4%)でした。

そして、ルールができる前には、半数を超える企業が、何の対策も取っていませんでした。「特にない」と答えた企業が55.8%です。対策には意味があるようです。勤務先が取り組んでいると答えた人のうち、カスハラを経験した人は12.2%で、勤務先の取り組みの度合いで比べたグループの中では、いちばん低い割合でした。

注意点が2つあります。宿泊業の数字は、ホテルと飲食サービスを合わせたもので、ホテルだけの数字ではありません。また、これは現時点で最新の調査ですが、すでに2〜3年前のものです。ルールができた理由はわかりますが、今、特定のホテルがどう動いているかはわかりません。

ルールが求めていること

事業主は、顧客等からのカスハラを防ぐための措置を講じなければなりません。そのための厚生労働省の指針(令和8年厚生労働省告示第51号、2026年2月26日)が、具体的な内容を示しています。対象となる言動は、事業に関係を有する人によるもので、顧客、取引の相手方、施設の利用者、今後顧客になりうる人も含まれます。電話やSNS上の言動も含まれ、対面だけではありません。

事業主が取るべき措置は、次のとおりです。

  1. この種の言動に毅然と対応し、労働者を守るという方針を明確にして周知し、何がカスハラにあたり、どう対応するのかを労働者に伝える。
  2. 相談窓口を決めて周知し、窓口の担当者が適切に対応できるようにする。
  3. 相談があったときは、迅速かつ正確に事実を確認し、被害を受けた労働者に必要な支援を行い、再発を防ぐ。
  4. 特に悪質なケースにどう対応するかを、あらかじめ決めておき、実際に動けるようにしておく。
  5. 相談した人のプライバシーを守り、相談したことで不利益な扱いを受けないことを明示して周知する。

これらがまったく整っていないホテルは、ルールを守っていないことになります。

カスハラにあたるもの

厚生労働省の指針は、次の3つの要素で説明しています。3つとも満たす必要があります。

  1. 顧客、またはその他の事業に関係を有する人の言動であること。
  2. 業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えていること。
  3. 労働者の就業環境が害されること。

2つ目の要素は、何が求められているか(言動の内容)と、どう求められているか(手段・態様)の2つで判断されます。どちらか一方だけでも、該当しうるとされています。指針は、目的、経緯、業種、頻度、労働者の属性など、あわせて考える要素を挙げています。就業環境が害されたかどうかは、平均的な労働者の感じ方を基準としますが、強い身体的・精神的苦痛を与える言動は、1回でも該当しうるとされています。要求の内容についての例としては、理由のない要求、商品・サービスと関係のない要求、契約内容を大きく超える要求が挙げられています。

厚生労働省は、これが限定列挙ではなく、個別の事案は、事実に基づいて判断されると、はっきり述べています。

ルールが変えないこと

ホテルが苦情を聞かなくてよくなる、ということではありません。指針は、すべての苦情がカスハラではないと、はっきり述べています。内容も、手段・態様も妥当な苦情は、正当な申入れであり、きちんと対応することは、引き続き仕事の一部です。実際に問題があって、不満を、はっきりと伝えるお客様は、あなたに対してカスハラをしているのではありません。

この線引きは、お客様にとってだけでなく、働く人にとっても大切です。よい方針は、労働者を暴言から守り、同時に、本当の苦情には、恐れずに対応する方法を伝えてくれます。

ホテルで期待できること

ホテルが上の5つの措置に取り組んでいるなら、次のことが見えるはずです。スタッフに周知されている、書面の方針。行き先として決まっている窓口や担当者。次に何が起きるかを示した手順。対応のための研修(必須の措置ではありません)。

1つの質問で確かめられます。「お客様から悪質な言動を受けたら、どこに行き、そのあと何が起きますか」。短く、はっきりした答えは、よいサインです。きょとんとされたら、それも一つの情報です。

自分に起きたら

以下は、厚生労働省の考え方に沿った、私たちの提案であり、法的な手続きではありません。

まず、自分の安全を守ってください。身体的な危険を感じたら、その場を離れて、助けを求めてください。必要なら、警察を呼んでください。

早めに上司に伝えてください。令和5年度の調査では、カスハラを経験した労働者の、その場での対応として最も多かったのは、上司に引き継ぐこと(37.4%)で、次が謝り続けること(32.1%)でした。そのあとの行動として最も多かったのは、社内の上司に相談すること(38.2%)でした。

覚えているうちに、何が起きたかを書き留めてください。日付、時間、言われたこと、されたこと、見ていた人。簡単で事実に即したメモは、誰が対応するにしても役に立ちます。

ホテルに相談窓口があるなら、使ってください。それが「カスハラにあたるのか」を、自分で判断する必要はありません。窓口は、そのためにあります。

ホテルに手順がない場合や、使うことに不安がある場合は、外部の窓口もあります。各都道府県の労働局と、一部の労働基準監督署に、総合労働相談コーナーがあり、解雇からハラスメントまで、労働問題全般を、無料で、予約なしで、電話または面談で相談できます。厚生労働省のハラスメント関連のサイト(あかるい職場応援団)にも、相談窓口が載っています。夜間や休日に、労働条件について相談できる無料の電話窓口もあります。時間と電話番号は変わるので、労働局のページで確認してください。

東京都には独自の条例がある

東京都は、2024年10月に東京都カスタマー・ハラスメント防止条例を制定し、2025年4月1日に施行されました。都道府県としては初めてとされています。ガイドラインも定められています。私たちは条例の本文を読んでいないので、定義や罰則について説明することはできません。東京で働いている方は、東京都の労働関係のページで確認してください。

同じ日に始まった、もう一つのルール

同じ2026年10月1日から、事業主には、求職者等に対するセクシュアルハラスメント(いわゆる就活セクハラ)を防ぐ措置を取る義務も生じました。応募している間、面接も含めて対象になります。ホテルの面接でも触れています。

ホテルに聞く3つの質問

  1. 「お客様からスタッフに悪質な言動があった場合、誰に伝え、そのあとどうなりますか」
  2. 「相談できる担当者や窓口はありますか。相談した内容は、守られますか」
  3. 「新しいスタッフは、難しいお客様への対応を、どのように学びますか」

これらは、ホテルの求人票の読み方とホテルの面接で勧めている質問と同じです。10月より前は、礼儀の問題でした。今は、事業主は答えを持っていることが求められています。

タイミングについて

ルールは新しいものです。実際の運用への落とし込みは、ホテルによって進み具合が違い、まだ準備中のところもあります。「いま整えているところです」という答えは、正直な答えです。いつまでにかを聞く価値があります。「うちではそういうことは起きません」と言われたら、もう一度聞いてください。

最初の一歩

就職活動中なら、3つの質問を面接のメモに入れてください。すでにホテルで働いていて、勤務先が何を整えているか知りたいなら、上司か人事に、方針はどうなっているか、どこへ行けばよいかを聞いてみてください。今は、それが普通の質問です。

出典: 厚生労働省Webマガジン「従業員を守るために ― カスタマーハラスメント対策の新ルール」(2026年8月)と厚生労働省告示第51号(令和8年)、令和5年度職場のハラスメントに関する実態調査(結果概要は2024年5月公表)、厚生労働省の相談窓口に関する案内、東京都の条例に関する報道発表。

KankoHR編集部

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